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ひとみちゃんのなみだ
童話   ひとみちゃんのなみだ


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「ばんざい!」
「ばんざい!」

えきで声があがりました

「ひとみをたのむ」

「はい..」
「きをつけてください」

「いってくる」

おおぜいの、へいたいさんたちは
おおくの人にみおくられて
せんちへと行きました。

ひとみちゃんは8さいです

おかあさんとふたりくらしになりました。

ひとみちゃんにとって
せんそうへ行くということも
わからずに
いつまでも
見えなくなった、れっしゃの方へむいて
日の丸のはたをふっていました。

おかあさんが
コンコンとせきをしました。

まもなくさくらがさこうとするころでした

ちいさなつぼみが
まだつめたい風にゆれていました。


******

「ひとみちゃん、はい おひるよ」

「うん!わ-い おにぎりだね」

「そうなの これからはね おこめがなかなか手にはいらなくなるから..」

「ゆっくりたべようね」

「はあい」

ひとみちゃんがおいしそうにたべることを
おかあさんはうれしそうに
見ていました

東京で大きなくうしゅうがあり
ひとみちゃんのおかあさんの家族は
もうなくなっていました。

ここはおとうさんの実家ちかくの
小さないなか町

おかあさんは
ないしょくの洋服をぬったり
人にたのまれて
畑をてつだったりしていました

おかあさんは
いつもコンコンとセキをして
もも色の顔をしていました

まだふたりは
結核にかかっていることが
わからなかったのです。
*****

ある日、ひとみちゃんの
おかあさんが
朝おきてきませんでした

ひとみちゃんは
しんぱいそうに
おかあさんの顔をのぞきこみました

おかあさん
となりのおばちゃん
よんでくるね

あっ いいの
おかあさん
がまんしてねているからいいわ
きょう、ねていたら
げんきになれるとおもうから

ごめんね
ひとみちゃん

ううん
はやく元気になってね

戸だなにね
きのう、ふかしたおいもがあるから
たべてね

うん
おかあさんは?

ううん
おかあさんは
ほしくないからいいの...

じゃ
のこしておくからあとでたべてね

いいのよ
みんなたべなさいね
****


ひとみちゃんは
そっとだいじそうに
おいもをたべました

ふわっとおいものあまさが
口にひろがります

もう少したべたいな
そう思いました

それでも、ひとみちゃんは
おかあさんがおきてくれたら
たべるからと
半分のこしました

まどのそばで
小鳥が
チュン、チュンとなきました

おいものしっぽでもいい?
かわいいね

5月の風が
ふきぬけました

せんそうがおわるまで
まだ3ヶ月ありました

おとうさんが
南の島で
なくなったことは

まだ、だれもしりませんでした。
*****

つぎの日
ひとみちゃんのおかあさんは
やはり、病院へ行くことになりました。

そして
にゅういんをすすめられました

小さい子がいますのでと
おかあさんがいいました

こまりましたね
どなたかに
あずけて、みてもらうことはできますか

そういわれて
おかあさんは
その日は帰ってきました

おかあさんは
ひとみちゃんにいいました

にゅういんしないといけなくなったの
おばあちゃんの
おうちで
しばらくまっていてほしいの
ひとみちゃん

ええ~
いやだよぅ
いっしょにいくよ
病院へ

ひとみちゃんはかなしくて
なきだしました。

************


きょうは
ひとみちゃんのおかあさんが
にゅういんする日です

おじいちゃんと、おばあちゃんが
ひとみちゃんを、むかえにきてくれました。

ひとみちゃんは
もうないていませんでした

下をむいてじっと
なくことをこらえていました。

ひとみちゃん
おじいちゃんたちのいうことをよくきいてね

おかあさんがいいました

ひとみちゃんは
うんと
小さくうなづきました。

せんそうによって
小さなひとみちゃんは
はなればなれになって、くらすということを
しなければならいのでした

****

ひとみちゃんや
これおたべ

おばあちゃんが
真っ赤にうれたトマトをくれました。

うん
ありがと
でも
おかあさんへ食べさせたいから
持っていたらダメ?

いいから
おたべ
おかあさんの分はあるからね

うん
おばあちゃん、ありがと!

せんそうは、ますますはげしくなり
夜になると
ひとみちゃんの住んでいる、いなかを
通りこして
大きな市内へばくだんを落としていました。

夜なのに
真っ赤に燃えるほのおは
真昼のように
空をこがしていました。

げんかんのほうで
郵便屋さんの
自転車の止まる音がしました。


****

ゆうびんやさんが
なにやら、おばあちゃんに
けいれいして手紙をわたしていた

おばあちゃんの顔は
紙のように白くなり
よろめいた

おじいちゃんを呼んで
仏間に入り
中から
泣き声が聞こえてきた

ひとみちゃんは思った

お父さんが死んだのかもしれない

そっと、ふすまを開けてみた

おばあちゃんは
泣きながら、
ひとみのおとうさんがね

死んだのだよ

そういった

ひとみちゃんは
たまらずに
外へ走り出した。


****


おとうさあん
ひとみちゃんは泣きながら
さけんでいた

ながれる雲も
青い空も
みんな、みんな
泣いているように
時計が止まったように

風だけが
吹いていた

ざらざらとした
おとうさんのひげをさわったこと
だっこしてもらったこと
いろんなことが思い出されて
ひとみちゃんは
大きな木に顔をつけて
いつまでも、いつまでも
泣いていた


****


やがて山に夕日は落ちて
ゆうやけの光が、ひとみちゃんをつつみこむ

最後のなみだひとつぶが
ほほを落ちていく

ひとみちゃんは
そっとなめてみた

お母さんと食べたおにぎりの味
しよっぱい味

おいしさの味
お父さんの味

あたたかい、お父さんにおんぶしてもらったこと
手をつないでもらった、さんぽ道

もうあえることのない、お父さん

さようなら

ゆうやけがひとみちゃんの
ほほをてらして、ほほえみかける

元気だしてね

なみだ色した
ひとみちゃんの目には
いつまでも
お父さんの思い出が、かがやいていた。
by yukarin0513 | 2013-06-03 17:42 | 童話
童話   はじめての木のぼり
  はじめての木のぼり Ⅰ

きょうは、子ねこたちのはじめての木のぼりです。

男のこマロンちゃん、グレイちゃんは
いっしょうけんめいに、のぼりはじめました

はやく、おいでよぅ
まってぇ こわいよぅ
女のこのハナちゃんがいいました

もういっぴきのミミちゃんは
木の下でふるえています

こわいよぅ
こわいよぅ
のぼることなんてできないよぅ

木の上からは
とおい雲までみえます

はやく
おいでよう

ハナちゃんは、のぼりはじめました

ミミちゃんは
なんとか木につかまりました

マロンちゃん、グレイちゃんが
近くまできて
おうえんしてくれました

ほら
もうすこしだよ

ぼくたちはいつも
いっしょだよ
たすけあっていこうね

なかよしだもんね
うん
ミミちゃんは、げんきよく
おへんじをしました。

「あっ ! ママがきたよう」マロンちゃんがいいました。

「おりてきてね そっとね
ほら、ゆっくりね おちないようにね」
ミイママはいいました。

「おりこうに、なかよくあそんだのね
みんないつもなかよしね ママうれしいわ」

「うん!」
みんな元気よく、声をだしました。

「ママぁ ぼくたち、ずっといっしょだよね」
マロンちゃんがいいました。

ミイママのかおがすこし
さみしいかおになりました。

「ずっと、いっしょにくらせるように
なかよくしていようね おりこうね」

「ママ やくそくするわ ずっと なかよしだもんね」

ゆうひがみんなのかおを、てらしていました。
そろそろ、おうちにかえるころです。

「ママ あのあかいくもはなあに?」 ミミちゃんがききました。

「あれはね、おひさまがね
いちにちのさいごのほほえみ、してくれているのよ きれいでしょ」



「ミイちゃん、おかえり
みんないた?なかよくあそんでいたのね」

とも子おねえさんが、いいました。

「ミイちゃん、こねこたちね おおきくなったから
そろそろ、みんなをもらってくれる人、さがさないといけなの
わかってね ごめんね」

「それまでね
みんなでね、おにわのあの木でなかよくあそんでね」

ミイママは、さみしくうなづきました。

「ママぁ どうしたの?」

いちばん甘えん坊のミミちゃんが、ききました。

「ううん いいのよ ほら!
お乳のんでね みんなもね」

「ママのしっぽでまたあそんでいいからね」

こうして、4ひきのこねこたちは
あたたかいママのおちちを
いつまでもすっていました。

かわいい子ねこいます
さしあげます
かわいがってくれる方さがしています
おんなの子、おとこの子います

ミイちゃん
これでいいかしらね
とも子おねえさんがききました。

ミャァ~
はい..
いいです

あの子たちといるのも
もうすこしだわ...

ミイママは、にわの大きな木を見ました

大きな木はにっこりといいました

きっと
いい人みつかりますよ
はっぱをゆらしてそういいました

だって、とも子さん、ミイさん
とってもやさしいんですものね

いつもここからみていますよ

今日もすてきなおひさまが、かがやいています


みんなきいてね
みんなはいつもね
なかよしだったけれどね

もう大きくなったら
みんなわかれてくらすことになったの

これまで
なかよくあそんでよかったね

ママぁ
いやだぁ
ミミちゃんと、ハナちゃんは
なきだしました。

でもね
大きくなったら
みんな、あたらしいかぞくのもとでくらすのよ

ほら
あの大きな木にのぼってあそんだこと
わすれないでね

今夜はみんな
いっしょに
手をつないでねようね

ミイママのひとみがうるんでいました

あした、さいごにみんなであの木にのぼろうね




ほら
おちないようにね
しっかりつかまってね

うん
ママぁ
ほらこんなに上まで、のぼれるようになったよ
マロンちゃんがいいました。
次にグレイちゃんものぼりました。

ハナちゃんとミミちゃんは
ミイママといっしょにのぼりました。

大きな木に
おれいをいってね

あそんでくれてありがとうね

いいんですよ
ミイさん
たのしかったですよ
かわいい子ねこたちでしたね
おおきな木はいいました

ありがとう

あした、もらわれていくことになりました。

そうかい
そうかい

大きな木は、うなづきました

おぼえておいてね
ほら
ゆうやけのえくぼがほほえんでいるよ

みんな、元気でね

うん
ぼくたち、ゆうやけをみると
いつもママをおもいだすよ

はっぱは、風にゆれて
いつまでも
みんなは、ゆうひをながめていました。
by yukarin0513 | 2013-06-01 21:57 | 童話